わたしを包む確かなぬくもり |
今年の春。祥子さまはアメリカの大学を卒業し、日本に帰国された。 祐巳と祥子が暮らすマンションは、都心から少し外れた、住宅街が密集する比較的緑の多い地域にある。南向きの風通しのよい2LDKのこの部屋は、6階建ての5階部分に位置する新築のオートロックのマンションの一室だった。 「祥子さんは小笠原財閥のお嬢様だからなあ。祐巳ちゃん、変なものを食べさせないように気をつけないとな」 「お父さんたら!変なものってどういう意味よー??」 「大丈夫よ。祥子さんは祐巳ちゃんが作ったものは不思議に何でも口にあうってこの前遊びにいらしたときにおっしゃってたもの」 「そうだな。祐巳ちゃんはお母さんの娘だもんな。料理が下手なわけがないよな」 「まあ、お父さんたら」 のんきな両親の会話を聞きながら、まったく、天下泰平とはこのことだと我が親ながらちょっぴり呆れた祐巳だったが、祥子さまと一緒に住めるっていう嬉しさで有頂天になっていたから、一人なんだか不機嫌な顔で「俺、知らないからな」とそっぽを向いた祐麒に、姉離れできてないなあと自分のことを棚にあげて苦笑したのだった。 「あー!お姉さまったら、ニンジン残しちゃダメですってば!」 夕食の席で、さりげなく祥子さまの皿のふちに集められた拍子切りの人参を睨みながら、祐巳は声を上げた。 「…後で食べようと思っていたのよ」 「嘘です。そうやって食べず嫌いばっかりしてると大きくなれませんよ」 「もう十分大きくなったわよ。それより祐巳、お父さまからお話ってなんだったの?」 「話をそらさないでください。…電話では、家に来るようにって言ってただけで、何の話かは聞いてないですけど。たぶん、山梨のおばあちゃんのお誕生日祝いをどうするか、とかそんな相談じゃないかと」 「そう。祐巳はあまり家に帰らないから、お父さまもきっとお淋しくていらっしゃるのよ。今度の週末は久々にお家でゆっくりしてらっしゃい」 「お姉さまこそお家にはほとんど顔を出されないじゃないですか。それに、週末はお姉さまもお休みなんですから。たまには、その、ゆっくり…」 一緒に過ごしたいです、と言いかねてごにょごにょと濁した祐巳の言葉を誤解したのか、 「そうね。私もたまには家に帰ってみようかしら」 と祥子さまが答えたから。 そして土曜日。祐巳が久しぶりに福沢家に帰宅すると、家の中には誰もいなかった。そして、キッチンのテーブルの上には、<祐麒と一緒にお祖母ちゃんの誕生日プレゼントを買いに行ってきます。冷蔵庫にカレーが入っているので、温めてお父さんとお昼に食べてください>とメモが残されていた。 「お父さん、ただいま。お昼ごはんはカレーだって。 呑気に声をかけながら応接室を覗くと、そこにはお父さんともう一人、若い男の人が座っていた。 「――お、お、お父さん!お客様ならそう言ってくれれば…!!」 顔を真っ赤にして慌てふためく祐巳に、その男の人はさっと立ち上がりながら笑って軽くお辞儀をして、それから片手を差し出して言った。 「いえ、お気遣いなく。 「あ、あの、ごめんなさい。みっともないところお見せしちゃって。 狼狽のあまり差し出された右手を、祐巳は左手で握り返してしまった。寺島さんがぷっと吹き出したから、ますます顔が赤くなって。 「…では福沢さん、僕はこれで失礼します。祐巳さん、いずれまた」 くすくす笑いながら、さっさと玄関に向かう寺島さんをあわてて見送りながら、お父さんをきっと睨みつけたら、お父さんはちょっと不思議な表情で笑った。 久しぶりに家族4人そろっての夕食の後。お母さんは食事の後片付け、祐麒はレポートの課題があるとかでさっさと部屋に引き上げてしまった。リビングに残ったお父さんと祐巳の二人がお茶をすすっていると。 「祐巳ちゃん、今日来てもらった話だけど」 「なに?そういえば、お祖母ちゃんの誕生日プレゼント、今日もうお母さんと祐麒が買ってきちゃったんじゃないの」 やっぱり相談というのは口実で、祥子さまのおっしゃったとおり淋しかっただけなのかな、と祐巳が思ったら、すこし気まずそうな表情でお父さんが言った。 「祐巳ちゃんは、さっき事務所で会った寺島さん、どう思う?」 お父さんの言っている意味がよくわからなくて。きょとんと両目を開いた祐巳にちょっぴり表情を緩ませてお父さんが続けた。 「うん。正直に話すとね。寺島さんが、祐巳ちゃんを気に入ったんだそうだ。それで、正式に紹介して欲しいと申し込んできたんだけど」 お見合い、オミアイ。 「えーー??お見合い!!??」 あまりのショックに、月曜までいる予定だった家を早々に退散して祥子さまと暮らすマンションに戻ると、同じく小笠原の家に帰られていたはずの祥子さまがなぜかいらっしゃって出迎えてくださった。お家に帰らなかったのですか、と訊ねたら、特に理由はないけれど、とおっしゃった祥子さまだったけど。祐巳は、祥子さまがなかなかお家には帰らない理由を、薄々察してはいた。 「…今年の夏休みに私が父の事務所でアルバイトをしていたときに、その、私を見かけた、らしいんです。…私はお会いしたかどうか覚えてないんですけど」 「…そう。お父様のたってのお頼みなのね」 「まあ…、そんな感じです」 父親の話は、たっての頼み、というものではなかった。ただ相手は、いわゆる大手ゼネコンといわれる超大口のお客様の御曹司とのことで。祐巳ちゃんが嫌なら断っても良いんだよと言ってくれたけど、父親の立場を考慮すると、はいそうですかとお断りするなんてできるわけがない。 「でも、ちゃんとしたお見合いではなくて、ホテルのレストランで食事をして、少しお話をする程度だそうですから」 「祐巳。それを『ちゃんとしたお見合い』と言うのよ」 「え。…そうなんですか。知らなかった」 祥子さまはふっとため息をついて。 祥子さまは、大学を卒業される前から、お祖父さまやお父さまから勧められるそれこそ降るような縁談を端から断っている。祐巳は、ヒステリックに電話を叩き切る祥子さまの姿を何度も目の当たりにしていた。家に帰れば、電話を切るようにはいかないから、このところずっとご自宅から足が遠のいているのだろう。そんな祥子さまだから、祐巳が今回の話をなし崩しに了解したこと快く思っていらっしゃらないのかもしれない。 『行ってらっしゃい』 一緒に住むようになってから、祐巳と祥子さまの会話は以前と比べて格段に増えた。この春、祥子さまが始められた小笠原グループでのお仕事の話や、卒論に追われる祐巳の軽い愚痴。だけど、互いの将来についてはあまり触れられることはなかった。それは、会話の端々でさりげなく、そして注意深く回避されていたけど、それでも常に二人の間に重く横たわっていて、きっとお互い暗黙のうちに、口にしてはならないことのように感じていることを祐巳は知っていた。祥子さまもまた、二人が暮らすこのおままごとみたいな日々を心から楽しいと思ってくださっていることを祐巳は知っていたし、祥子さま自身もそれは度々口にされていたから、この生活もいつかは終わりが来ることを寂しいと思っていてくださることはわかっているけど。 祥子さまと暮らす今は、あまりに楽しくて嬉しくて。二人で夕食を食べたり、他愛のない会話で夜更かししたり、週末には買い物をして、時には少し遠出することもある。そして祐巳は、夜になってそれぞれの部屋に戻る瞬間をいつも名残惜しいような切ないような気持ちで迎えていた。 祥子さまとずっと一緒にいたいけど。日本、いや世界でも有数の大企業を擁する小笠原グループの跡取りである祥子さまは、今は社会勉強の一環として祐巳との生活を送っているが、いずれは、お祖父さまやお父さまが持ってくる縁談の一つを受け入る日が来る。そうなったら祐巳は―。祥子さまと暮らすこの日々の幸せを、いずれは手放さなければならないことを想うと、祐巳はいつも泣きたいような気持ちになるのだった。 実習だの卒論だのとなんだかんだ日々を送っていたら、あっという間にお父さんとの約束の日がきてしまった。 「ではお姉さま、行ってまいります」 「祐巳」 マンションの前の道は少し狭くて、慣れた人でないと進入しづらいということで、車で迎えに来てくれる約束のお父さんとは、大通りのコンビニエンスストアの前で待ち合わせた。 「あれ?祐麒。お父さんは?」 約束のホテルは少し都心を離れた郊外にある。車では40分ほどの距離だった。道のりを半分ほど過ぎて、それまでぼんやりと物思いにふけっていた祐巳は、発進してからずっと沈黙が続いていることに気がついた。そういえばここ最近、正確に言えば祐巳が引っ越して以来、祐麒とはあまり話をしていなかった。 「祐麒。最近どう?」 にべもない祐麒の返答で会話が終わって、車内は再び沈黙に包まれた。今日これからのことで頭がいっぱいで祐麒の様子にこれまで気付かなかったけど、ハンドルを握る祐麒の横顔は不機嫌そのものといった表情を浮かべている。百面相の異名を取る祐巳よりは、多少は制御可能とはいえ、祐麒もかなり考えが顔に出るほうだ。 「ねえ祐麒、なんか怒ってる?」 「…祐巳、おまえさ」 「俺ホント、祥子さんに同情する」 祐麒はそれに答えずに、青信号に従って車を走らせ始めた。車の揺れに身を任せながら、祐巳はさっきの祐麒の言葉を胸の中で繰り返した。 途中の道が少々渋滞していたせいで到着の予定の時間を少し過ぎてしまった。ホテルのエントランス前に車を停めながら、祐麒がぽつりと呟いた。 ホテルは周囲を見下ろす高台の上にある。宿泊や食事のほか、大小の会合に使われる宴会場や別棟を備え、いくつかのブライダル施設も整った大きな建物だった。少し息を切らして待ち合わせの喫茶室に入ると、窓際のテーブルに座ったお父さんが軽く手を上げて合図を送ってきた。 「ごめんなさい。遅くなっちゃって」 運ばれてきたセイロンティーにミルクとお砂糖をたっぷり入れて一口すすると、ようやく呼吸が元通りに回復した。 「…あちらは、お一人でお見えになるそうだ。あまり大勢でこられると祐巳ちゃんが落ち着かないだろうと仰ってね」 相手の方――寺島さんは、写真、身上書、家族書、親族書、健康診断書などなど、いわゆる釣書といわれる書類を一式、ご丁寧にも自ら持参していた。聞けば、お父さんの事務所で祐巳とばったり会ったその日が、書類を届けにきた日だったらしい。祐巳は、そのどれにもまだ目を通していない。興味がないわけではないけれど、経歴や財産などで人を判断するようでなんとなく気が引けたから。 寺島さんは予定の時間きっかり30秒前に現れた。 レストランで通されたテーブルは、「個室」との予約だったが、壁ではなくて低い手すりと植え込みで仕切られて周囲の声が届かないように工夫された開放的なスペースになっていた。受付で予約の名前を名乗ると、慌てて飛び出してきた支配人らしき人物の様子から、寺島さんがこのレストラン、いやこのホテル全てに対して大きな影響力を持っていることが窺い知れた。 「柏木優くんか。懐かしいな」 「ご存知なんですか、柏木さんを」 面白い男。祐巳にとっての柏木さんの印象は、「頭が良くて何でもできてちょっぴり意地悪な大人の男の人」だ。 「うん。飄々としているようで案外負けず嫌いなんだな。テニスで負けるとむきになって何度でも挑んできたよ。自分がこうと思い込んだら、周囲の思惑を気にせず行動するところもあって、目が離せなかった。なんだか可愛く思えてね。――弟がいたらこんな感じだろうかと思ったよ」 このひと、柏木さんに勝ったんだ。 「――そういえば以前噂で、どこかのお嬢様との婚約を解消したことがあるって聞いたけど」
祥子さまは今、なにをなさっているのだろう。放っておけば一日中でも本から目を話さないほどの読書好きでいらっしゃるから、また窓際のチェストに座って本を読んでいらっしゃるだろうか。それとも、お部屋のパソコンの前に座って、お仕事の資料を熱心に眺めていらっしゃるだろうか。どちらにしても集中なさっているときは、日が暮れて部屋が暗くなったことにも、お食事の時間になったことにも気付かないことがあるから、祐巳が教えて差し上げなければいけない。 「――…巳ちゃん」
お父さんに呼びかけられて我に返ると、慌てる顔がよほどおかしかったのか、寺島さんが祐巳を可笑しそうに見つめていた。 お父さんが「喫茶室で時間を潰しているから、ゆっくり回っておいで」と言ったので、寺島さんと二人でまずはホテルの庭に出た。ホテルの正面から見て左手には西洋式の庭園が広がっていて、ブライダル棟が並ぶ右手側には、芝生と花壇が植わっている。祐巳たちが今いる回遊式の日本庭園は、建物の裏手側に位置していた。 「祐巳さんは、不思議な人だな」 「そうか。祐巳さんは覚えていないだろうな。…三ヶ月ほど前に、仕事で福沢さんの事務所に伺った帰りに、玄関の掃除をしていた祐巳さんに尋ねたんだ。駅前まで出たいのだけど、どこでタクシーが拾えるのかって」 祐巳はなんとなく、そのときのことを思い出したような気がした。ただ、その相手が寺島さんだったかどうかはやっぱり思い出せない。いや、その人はもう少し、歳をとっていた気がする。歳をとって疲れているようだったから、それで――。 「それで、僕は駅まで歩いて帰った。とても気持ちの良い夏の夕方だった。歩きながら、仕事に追われてもう長いことこうやってゆっくり街を眺めながら歩くことなんて忘れていたことに気がついた。そして、僕にそれを思い出させてくれた少女のことを考えていた。――いっしょに歩けたらどんなに楽しいだろう、って」 「…寺島さん」 「本当は、こんなお見合いなんて大げさにしたくはなかったんだけどね。でも、僕は女性に対してあまり器用な人間ではないし、それに、気軽に誘ってこのことを軽く見ているとは思われたくなかったから」
「僕と、将来を視野に入れて、付き合ってくれませんか」 寺島さんのその言葉が、夕暮れの突風のように祐巳の中をかき乱して、吹き過ぎた。
祥子さまは、ヒステリックで傲慢で、我がままで偏食で。 寺島さんはすっごくいい人だ。きっとこの人と結婚したら、暖かい笑いに満ちた福沢家のような家庭を築けると思う。それは祐巳の理想の家庭だ。 ――だけど。 「…君の表情は、言葉より多くを語るんだな」 うつむいて、今にも泣き出しそうに唇をかみ締めて、祐巳はやっとの思いで謝罪の言葉を口にした。 「…ごめんなさい」 ――だけど、この人は祥子さまじゃない。 「…あの、本当に、ごめんなさい…」 寺島さんは、ふうっと大きくため息をついて、それから祐巳に微笑んだ。 「いいんですよ。謝られてはこちらが余計に悲しくなってしまうから。 最後の言葉で目を上げると、寺島さんは微笑んだままの瞳で、祐巳に尋ねた。
「では、その人のところに行きなさい。 「いいえ。同じじゃないんです。 「それは勘違いだ。君を知って、君を想わずにいられる人間はいない」 「そんなこと…」 逡巡するように視線を巡らせた祐巳の肩をそっと押し出すように手を添えて、寺島さんがきっぱりとした口調で祐巳に命じた。
その声に、祐巳ははっと顔を上げた。 ホテルのエントランスを飛び出すと、祐巳は大きく手を振ってタクシーを招き寄せた。滑るように近づいてきた黒塗りのタクシーを遮るようにして、横合いから一台の白い車が飛び出して祐巳の前に停まった。抗議するようにブブッーと鳴らされたタクシーのクラクション。助手席側の窓ガラスがスルスルと降りて、運転席には祐麒が座っていた。 「祐巳、早く乗れ!」 驚いて動きを止めたのは一瞬のこと。 「悪いけど、いつもみたいに運転に気を遣ってられないからな」 ――祐麒の言ったとおり、それからの運転はあの聖さまもかくやと思われるほどの見事な暴走っぷりだった。
ぼんやりと窓辺のチェストに腰掛けていた祥子は、ドアを開けた祐巳の姿を見て、がたりと立ち上がった。もうずっと前からページを閉じられたまま膝に置かれていた本は、立ち上がると同時に床へと音を立てて滑り落ちた。 カーテンを開け放した窓から入る秋の夕陽に照らされて、陰になった祥子さまのお顔はまったく見えなくて。 「――祐巳!どうしたの?もう、終わったの?」 祥子さまが矢継ぎ早に尋ねる間に祐巳は傍に駆け寄って、祥子さまの膝を抱えるように両腕を回して、足元に崩れ落ちた。祐巳にすがりつかれた祥子さまは、倒れるようにチェストに再び腰を下ろすと、少し慌てながら祐巳の肩を起こして訊ねた。 「祐巳?」
「私は、いつまでも、お姉さまのお傍にいたいんです。 堪らず溢れだした涙が頬を伝って次から次へと流れ落ちてゆく。 「私は、お姉さまが好きです。…誰よりも、何よりも、好きです」
やがて、永遠とも思える時間が過ぎて、ゆっくりと体を起こした祥子さまが祐巳の手をそっと引いて立ち上がらせた。部屋は、いつの間にか薄暗い夕闇に転じていた。静かに歩き出した祥子さまに手を引かれてリビングを抜けながら、祐巳はぼんやりと、お姉さま、また明かりをつけるのをお忘れになってる、と思った。
気がつくと、肌に張りつくシーツの暖かさのほかに、自分以外の温もりがすぐそばに感じられた。 祐巳は涙が出そうなほど自分の身体が愛おしいと思った。――愛する人に愛された、この身体が。
「…祐巳。私は…」 それだけ言って口をつぐんだ祥子さまの瞳によぎった陰りに、微かな後悔の念を感じた祐巳は、早まる鼓動を押し殺して訊ねた。 「…後悔、していらっしゃるのですか?」 隠し切れない不安に震えた祐巳の声が耳に届いた瞬間。 「いいえ、後悔などしていないわ。 「…お姉さま」 祥子さまが意味する重い枷。それは、小笠原家を取り囲んでどろどろと渦巻くどす黒い謀略を垣間見た高等部時代の夏の日の出来事。 ――いいんです。構わないんです。私は、祥子さまと一緒なら、きっとどんなことでも乗り越えていけるから。 祐巳の瞳から、まぎれもない承諾の意を汲み取った祥子さまは。このうえなく優雅なしぐさで片膝を折って、祐巳の前にひざまずいた。 「祐巳、私と結婚してくれる?」
「はい、お受けします」 「…ありがとう」 祥子さまは、右手に持ったリングをそっと、祐巳の左手の薬指にくぐらせた。
おわり
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