おそろい最上級 |
さぁ、お入りになってください、とドアを開けると、開口一番祥子さまはそう仰った。 「何か持ってきますね」 祥子さまが持ってきてくださったケーキをお皿に乗せ、準備していたお菓子やお茶と共にトレーに乗せて部屋へ急いだ。
「お待たせしました」 「何をしていらっしゃるのですか」 「懐かしいわ、ちゃんと持っていてくれたのね」 祥子さまがご覧になっていたのはジュエリーボックス。今までの祥子さまとの思い出の品が沢山つまった私の宝物だ。 「当たり前ですよ」 だって祥子さまから頂いたものやおそろいで買ったものなのだから。
そう言って取り出したのは一つのオルゴール。 「覚えているわ、時々聴いているもの」 そう、これは一年前の五月中旬。素敵な雑貨屋さんでみつけたオルゴールだった。とても綺麗な細工が施してあって。 とても綺麗な音色で、特にお気に入りの宝物。祥子さまも大切にしていてくださっているんだ・・・・。そう思うと嬉しくなる。 「それでは祐巳、これは覚えていて」 「もちろんですっ」 祥子さまが手に取ったのは高等部時代に私がおそろいでプレゼントしたブローチ。 その後も、ジュエリーボックスから溢れてくる思い出をあれこれ取り出し、懐かしいお話を沢山した。 あれはどれくらい話をしたときだっただろう・・・祥子さまのご様子がなんだか・・・・・ 「そうそう、これ私、どうしてもおそろいで欲しくて、わざわざ別のお店まで探しに行ったんですよね」 半年前に買ったネックレスを取り出して話をしていたときだった。
「祥子さま」 「・・・・・」 どうしたんだろう、何だか変。祥子さまを捕まえて変、というのも恐れ多いが本当に何だか様子がおかしかったのだ。 「どうかなさいましたか、もしかして御気分でも・・・・・」 そう言い掛けたときだった。 「・・・・・ねぇ祐巳、私とおそろいって本当に嬉しいの?」 「嬉しいですよ!もっともっと欲しいくらい」 おそろいが欲しくないなんて私にはありえないです 「本当に?」 思いつめたお顔。こんなときでも美しい横顔。 本当です、そう答えようとしたそのときだった。
「・・・はい。」 「ねぇ、あのね祐巳・・・・・では、おそろいの・・・・おそろいの苗字にする、っていうのはどうかしら」
一瞬、何が何だかわからなくなった。 祥子さまとおそろい………?おそろいの――――― 時が止まったみたいだった。 あまりにも急な出来事過ぎて。 「私、祐巳とおそろいの苗字にしたいと思っているの」
「私と結婚して頂戴、祐巳」
「返事は急がないから――――――――」 そう言いかける言葉を遮った。 溢れる気持ちがやっと言葉になった。 「私もっ、私もおそろいの苗字がいいですっ」
この世で祥子さまと私だけの。二人だけの特別。
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